どんな研究してたの?その1 ノルウェーの新車市場における環境税

それで君、一体どんな研究をしてたの?と聞かれるとどれをどの位の深さで喋って良いのか結構困ります。

環境税の研究とか、養殖サーモンの市場周期性とか、ロジスティクスとか、諸国における地球温暖化への意識調査とか、投資におけるリスクと投資コストの関係性とか、実は結構色々あるんですよ。

忘れてしまわないうちに備忘録&宣伝的な意味でざっくり書いていこうかと思います。

 

初回はノルウェーにおける新車市場に置ける環境税の改善の研究です。データ分析要因として大学院に付属してる研究所に雇われて、ひたすらデータの整理や回帰分析や多変量時系列なんか使ってました。

ノルウェー政府はEU2020目標に対応して独自の地球温暖化対策目標を設定しており、その中に”2020年までに新車の1km当たりの二酸化炭素排出量の平均を85gにする”という物がありました。

ノルウェーでは2007年から新車市場において二酸化炭素排出量(以降 co2/km)に課税を行なっており、年々その税率を上昇させていました。しかしその上昇には特に大きな根拠をつけてはおらず、85g/kmと目標を設定した際にどの程度課税を行えば良いかは解っていませんでした。

co2 tax in nroway

 

上の図はco2/kmに掛けられた税金の額を年ごとに表示させています。見て分かる通り年々税金は上昇しており、逆に一定以下のco2/kmの車には補助金が出されています。

もしこの税金に効果があるのであれば、この税金の上昇と平均co2/kmの減少には相関が出るはずです。これを統計分析によって見つけ出して解明して、85gにするためにはどの程度課税を行えば良いかを考えるというのが研究の目標でした。

単純に重回帰モデルを作って効果を見てみてもいいのですが、実は車の市場は少し複雑な構造をしており、車の種類(軽自動車・スポーツカー・SUV etc…)ごとの効果と課税によって需要がそれらを横断する現象を捉えなければ市場を正確に捉えることが出来ません。つまり、単純なモデルから推定した税率では85g/kmという目標に対して過剰に若しくは過小に税を課すことになります。(2,3日で率を変えられるのならこれは恐らく大きな問題ではないのですが、1年に1回で変更にそれなりのコストがかかるのでより正確に行う方がメリットがあるのです)

このプロジェクトの話が僕に回ってきた時には締め切りまで既に2ヶ月を切っており、データもなく今までに掛けられた税金の情報もまとまっていませんでした。

まずは全ての売上げデータがないと話しにならないので教授と一緒にオスロまで出張してデータ取得の交渉。そして実はノルウェーには売上げデータにco2/kmが含まれていないことが判明、よって売上のデータセットと新車市場で登録されている車のスペックの一覧表を対応させ無くてはならなくなりました。

最悪な事に同じクルマの名前と型番でも付属させるオプションによって違う車として扱われる上にco2/kmも微妙に異なるので車の種類は大体3000種類程度に渡り、自動でのマッチングはほぼ不可能。(もしかしたら何か良い手があったのかもしれないけど。)結果手作業によってそれらを組み合わせる事に。

結局データは2008年と2012年のみが使用可能な状況となりそれらのデータから税金の効果を測定する事になりました。

2008年

tax line 2008 real

2012年

tax line 2012 real

 

 

上の2つの図は2008年と2012年における車の価格(co2税を含む)とその車のco2/kmを散布図として表しています。さらに赤い線はco2/kmに掛かる税金で、2008から2012に掛けて上昇しているのが見えます。

赤い線の上昇に伴って車の売り上げの集合が左に寄りつつあるのがわかると思います。

実際に2008と2012のco2/kmの売上分布を比較してみるとこんなかんじになります。

density line sales weighted

 

これでなんとなくco2/kmに税金を課すことによってその平均が下がってゆくことが解ります。(ちなみに2012の一番左にある山は電気自動車)

そこで問題になるのはじゃぁ一体どんなメカニズムで減少してゆくのだろうか?という事です。人口が500万人程度しかいないノルウェーは市場規模が小さいのでメーカーが税金に対応した製品を作るということはまずありません。よって消費者の行動の変化によってこの変化が起きているわけです。

 

当初の予定では多変量時系列でArellano-bond GMM estimator を使ってカテゴリごとの需要曲線を推定して、供給曲線が固定されてるものと想定(この仮定は上の市場規模から想定)して課税の効果を測る予定でした。

が、上で述べたとおり2008年と2012年のデータしか手に入らなかったため、Arellano-bond GMMは使えず(IVで自己回帰する必要があるので)、なんとかして他の手法を使う必要がありました。

結局締め切りギリギリまでいい方法が見つからなかったためにsimple structural modelを組んで価格弾力性を推定(計算?)しました。・・・正直こんなお粗末な計算で良いのかなとも思ったのですが、教授いわく後々で修正が出来るなら良いそうです。・・・ホントかなぁw
(というか、ここに関しては僕がもっとデータ分析の知識と経験が深ければより良い結果を残すことが出来たのだろうなと深く反省してる点です。)

year

2012

2013

2015

2017

2020

tax for marginal co2/km

750

900

1050

1125

1125

 

結果として導入する課税プランは上のテーブルの通りに成りました。(単位はNOK=17JPY)
ちなみに課税は今まで非線形・・・と言うか非連続になってたんですが、今後の分析を行う上で障害になるということで線形にしました。
また、重量にかけている税と馬力にかけている税もco2/kmと相関があることが解っていたので、それらの税も統合して今後より分析をしやすい状況にしました。

もうちょっと詳しい結果があるんですが、まだノルウェーで論文として発行されてないっぽいので発行されたら追記しようかと思います。

こうやって思い返してみると、別の年のデータが手に入って分析しやすいように制度が帰られているわけですから次の研究がとてもおもしろそうだなと思うわけです。

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