「施策デザインのための機械学習入門」というデータサイエンスの起爆剤

自分がちょっぴり貢献した本が今日から書店で販売されています!

今回の本の内容は一言で言ってしまえば「企業における機械学習の使い方」といった感じです。

数年前はビッグデータやらAIやらと言われていたブームも、最近はDXという単語に置き換わってきました。そんな中でデータサイエンスもその期待値が徐々に現実に即したものになってきつつあり、データサイエンティストな方々も自らの効果・価値を証明する必要性を感じ始めているのでは無いでしょうか?

自分も仕事をする中で「効果のあるAI」が求められると言ったケースに度々直面しています。そんな状況ではまず効果検証が重要だろうということで、前回の著書である効果検証入門ではAI・機械学習の応用を含む、施策の効果検証について解説し、データサイエンス協会のシンポジウムなどでも因果推論に基づいた効果検証の重要性についてお話させて頂いたりしました。

しかし、効果検証入門では効果の検証のみにフォーカスしていたため、実際にその効果をどうやって改善することができるのかは謎のままでした。今回の施策デザインのための機械学習入門は、この「どうやったら効果出せるの?」という問に対する答えを提供してくれる内容になっています。

本の内容をより詳細に知りたいという方は、筆頭著者の齋藤さんのブログ記事に冒頭部分が公開されているので、そちらを読まれると良いと思います!

誰に読んで欲しいか?

企業のデータサイエンティストに読んで欲しいのはもちろんなのですが、僕としてはこれから企業でデータサイエンスをする新卒の方達や、学生の方達が読むと非常に価値があるのではないかと思っています。

僕の知る限りでは、多くの企業のデータサイエンティストはこの本で書かれているような、効果を出すためのデータサイエンスのフローを行えていません。これはとりあえず機械学習を使いたいといった、歪んだモチベーションに基づいた問題設計に起因することもあれば、機械学習を利用した施策の効果が適正に検証されないためにまともなフィードバックを得られないといった問題に起因していることもあります。これは言い換えれば、効果を出すことに対して多くのデータサイエンティストがあまり経験値を得られてないことを意味しています。

つまり、今大学院などで機械学習を学んでいる学生とデータサイエンティストの間では、実は「効果を出す」点でさほどスキルや経験に差がないわけです。(効果検証の文化や仕組みが整っている企業とそうでない企業などで状況は異なりますが・・・)
これはある意味では、新卒や学生の方々が先輩たちを容易に追い越せる部分とも言えます。なので、学生や新卒の方々が施策デザインのための機械学習入門を読んで、先輩データサイエンティストたちを突き上げていくと良いなと勝手に思っています。

どんな変化が起きて欲しいか?

僕が所属するサイバーエージェントのAI事業部では、3年ほど前から「プロダクトの改善」をゴールとして設計した今回の書籍の内容に非常に近い研修を新卒の方を対象に行ってきました。これにより年々効果検証に対する考え方や、課題解決とデータサイエンスを組み合わせた力を持ち合わせたデータサイエンティストが増え、最近では組織全体の文化も大分変わってきました。また、問題設計の部分に関するディスカッションが増えてきたことも印象的です。こういった変化が日本のデータサイエンス業界全体にも起きると、データサイエンティストとして働くことがより面白くなるのではないかなと勝手に思っています。

僕がデータサイエンスの業界に入って大体8年くらい立ってしまったのですが、データサイエンスは事業の改善を行う道具として完成される兆しは一向に見えず、いつまでも直面している課題に対しての固有の解決方法をあれこれ(特にデータのバイアスや最適化したい指標について)考えなくてはならない状況です。それを考えると、今回の書籍でそのあれこれ考える部分に対して、ここ4-5年様々な国際学会で発展してきた技術を元に作られた型を提供し、論文を読まない人でもその型を入手できる状況を作ったことには大きな価値があるのではないかと思います。

しかしその一方で、これらの型を実際に使って課題解決を試みれば、いかにシンプルな方法で対応ができる範囲が狭いかに気が付かされます。そして同時に課題を乗り越えるための新しい技術や考え方に加え、これらの新しい技術と考え方を実際に試せる環境の価値のに気が付かされることになります。そして結果的には、データサイエンスと研究の繋がりの深さと、研究の重要性について考えさせられることになります。これはナイーブに与えられた問題設定を鵜呑みにし、ただありふれた既存技術をただ周りの人と同じように導入することでは得られない気付きであり、データサイエンスを楽しむための重要なきっかけになるのではないでしょうか?

そんなこんなで非常にオススメな1冊となっているので、ぜひ読んでみてください。

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