オマキザルとUberとLabor Supply

お久しぶりです。

Economics and Computationも最終日で興味のある発表は大体終わった午後です。

とある発表がちょっと色々思い出させる内容だったのでブログでも書こうかと思った今日この頃です。

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2010年位でしょうか、アメリカからの交換留学から戻ってきて大学院で何しよっかなーとか思っている際に一つの面白い話を聞きました。(か、何かの本で読みました

それは経済活動をオマキザルにさせてみる話で、人間が経済的な取引を行う際に現れるバイアスが同様に現れるかを観るための物でした。

人間には損失回避という非合理性があることが実験から分かっている。例えば見えている時の価値が200だが購入してみた時の価値が100になる商品と、見えている時も購入してみた時の価値も100である商品であれば前者の方をより好む傾向があります。

どちらのケースでも結果的に手に入る商品の価値は100なので、合理的な選択としては前者よりも後者を好む理由は無いということになります。

この実際の人間の選択と合理的な選択との差の事を「損失回避バイアス」と呼び、多くの実験でその傾向が認められています。このように合理的な状態を仮定して、実験や観測データの分析からギャップにパターンを見つけるのが行動経済学の研究の一つの進め方です。

オマキザルにお金の使い方と価値を教え込み、実際に経済的な取引をさせたところこの損失回避の傾向がオマキザルにも認められたそうです。

人間の進化の過程の中にあるオマキザルでも同様の傾向があるということは、損失回避のバイアスは人間の社会的な活動における経験等から形成されたものではなく、人間の進化の過程で獲得した能力であるということを示唆しています。

そしておそらくそれはすべての人間が持っているという意味合いも示唆しています。

当時行動経済学の研究の方法や、計量経済学の知識でさえ怪しかった僕にとってはこの理解は非常に面白く、何かを研究するっていうのはこういう事なんだなぁとしみじみ思いました。

 

さて、時は進んで昨日。このオマキザルの実験をしていたKeith Chenという経済学者が、UberのチーフデータサイエンティストとしてDynamic PricingとLabor Supplyについて話していました。

もう少し具体的にいうとUberで料金を変化させた時に、供給側であるドライバーたちの労働時間がどのように変化するか?というお題です。

Uberではドライバーがappを立ち上げれば勤務が開始され、appを落とせば勤務終了になるので労働時間は自由に意思決定できるようになっています。

また、サービスの価格は需要がどのくらい逼迫しているか?で決定され、需要に対して供給が少ない状態では価格が高くなるようなメカニズムが働いています。

ドライバーが合理的な意思決定を行うのであれば、価格が高い時に働き、価格が低い時にはあまり働かない状態になるはずで、実際にこの傾向が認められたそうです。

さて、この話自体にも経済学とインターネットの可能性を感じさせられましたが、より面白かったのはinstant paymentの話題でした。

今までのUberは週単位で支払いが行われるシステムでしたが、instant paymentに登録するとドライバーがお客を乗せて走り終わった5分後にはその料金をATMから引き落とせるようになります。

これによりUberでのドライバーの労働時間は15%程増加したそうです。

この話はまだ論文になってない模様ですが、おそらくは行動経済学でいうpresent biasで、すぐ手に入る価値の方を未来に手に入る価値よりも過剰に評価してしまうというバイアス故に起きている仮説が成り立ちます。(ちなみにこのバイアスもオナガザルに確認されているみたいです。

結果だけを見てみれば、Uberは給料支払いのシステムを変更することでドライバーの供給量を増加させてサービスの質を向上させることに成功したわけです。

 

このUberの話を聞いた時点ではあのオナガザルの実験をしてた人がUberで経済学者として働いてるとは夢にも思っていなかったので正直かなり驚きました。しかも猿の実験をしてた人が、インターネットの世界に踏み込んで実績を残しているわけです。

サーモンをやっていた自分もインターネットの世界で実績を残したいなと思う1日でした。

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