最近仕事でサプライチェーンとかを考える機会が出て来たので前に勉強してた事を振り返ってみようかと。
恐らく分野的にはオペレーションズリサーチ(OR)になるのかと思います。
大学院の授業でケースとして扱ったものが非常に僕の中で印象強く、ORとかサプライチェーンマネジメントとかっておもしろい!って思わせる物だったのでそれを紹介しようかと思います。
- 背景
2005年1月のある週末スウェーデンを巨大な暴風雨Gudrunを襲い、その結果7000万立法メートルの樹木が倒れてしまいました。
この量はスウェーデンの林業の約一年分の伐採量に等しく、経済的な価値へと換算すると320億ユーロ、約4兆4800億円程度の価値でした。
この嵐の後、スウェーデンの林業と時間との戦いが始まります。
倒れた木は時間が経過すると商品価値が落ちてしまいます。
そこで業者達は以下の事をいち早く行う必要がありました。
a. 倒れた木の収穫
b. エリアごとの倒れた木の量と各エリアでの需要の把握
c. 収穫した木の需要への配送
これはそんな自体に直面したとある林業業者のお話です。
この業者の被害量は約2500万立法メートル。伐採をするための機材は足りていましたが、それを需要に送り込む為の移送手段が足りていない状況です。
そこでドイツやフィンランドやスウェーデン北部からトラックを呼び寄せ、鉄道と輸送船と新たに契約を結んで運送のキャパシティを拡張しました。
需要と供給は以下の様に別々の場所に存在していました。(赤が供給で青が需要、マルの大きさがそれぞれの量の多さ)
つまるところこの業者は赤で生産された木を出来るだけ早く、そして安く青に届ける事を考える必要があるわけです。
2. サプライチェーン構築
林業でのサプライチェーンはおおざっぱには以下の様な物になっています。
伐採された木はいったん集められます。そこから直接向上に送られる物もあれば、長距離の輸送の為の保管場(Storage terminals)に運ばれる物もあります。
ここで問題なのは
「ある場所から別のある場所へ、何を使って、どのルートで、どの位木を送るのが全体として良いのだろうか?」
と言う事が感覚では解りづらいと言う事です。
もっと問題なのは、このケースでは輸送のみならず、生産のコントロールや木材の保存期間も意思決定の一環として行わなくてはならない事です。
なので、このケースでは以下の事を決定する為のモデルが組まれました。
- 何処で、どんな種類の木を、どの伐採チームが伐採するか?
- 何処のエリアで伐採を行わないか?
- 何処のターミナルにどのくらい木を置いておくか?
これらの決定は以下の様な制約条件化で行われなくてはなりません。
- 運送キャパシティ
- 伐採量のキャパシティ
- 伐採量と運送量の統合管理
結果的にこの意思決定は線形計画法をつかって行われました。
下の様なモデルが実際に使われているそうです。(ちゃんと数理モデルでやるんすよっていうのを見せたいだけなので、特に意味とかを見いださなくても良いかとw)
3. 結果
結果2400万立法メートルの倒れた木が収穫され、4ヶ月で1800万立方メートルが需要に届けられました。
線形計画法の結果として特徴的だった点としては、船舶による運送が殆ど行われなかった事が挙っています。
これは木が倒れたエリアが港まで遠く、配送コストが高く付く事、またトラックのキャパシティが最も貴重なリソースであった為にそこに割く事が難しいという理由でした。
ちなみにこの一連のおかげで供給が一気に発生した為に、2005年の木材の価格は軒並み下落してしまいました。
※参考文献
H. Broman, M. Frisk and M. Rönnqvist, Supply chain planning of harvest operations and transportation after the storm Gudrun, INFOR, Vol. 47(3), 235-245, 2009.
なんかちゃんとサプライチェーンと線形計画法の説明をした方が良いのかも・・・