「ねずみに支配された島」を読みました。
先週の昼休みにそばを食べたついでによった本屋でたまたま見つけたこの本。
久々に我を忘れて読んでしまいました。
とにかく良い本でした。
島という孤立した環境に最適化された種が、ほかの環境によって最適化された生物の侵入が発生した時、それらの種の関係性はどうなってしまうのか?というのがこの本の基本的なアイデア。
本の中では特に島の孤立した環境に適したが故に他の種と競合する能力を失ってしまった種達、特に海鳥たちが、より厳しい環境で適者生存を繰り返した末に勝ち残った哺乳類、ネズミ・キツネ・ブタ・ヤギ・ヒツジによって徹底的に殺戮されてしまう様と、そこに介入して無力さに絶望した過去の人類と限定的な勝利をおさめ始めた現代の人類の活動にフォーカスが当たってます。
外敵がいない環境では鳥の象徴ともいえるような飛行能力でさえ維持するコストが高く付き、時の流れによって失われてしまう。警戒する能力がなくても生存できるために能力は平均に回帰してしまう。
外敵がいないという環境では合理的な結果としての進化。でも、もし将来人間が島にやってきてそれに付随してきたネズミが外敵としてやってくると知っていたらそんな進化は辿りたくなかったのだと思う。
うん、やっぱり島は面白い。閉鎖された空間に適した存在が外界と出会ってしまうっていうシチュエーションはなんか興奮する。
別に鳥とネズミに限った話ではなく、人間だって同じことが起こり得る。
僕は大学と大学院で自分の環境を切り取って擬似的な島みたいな状態を作ってそこに最適化してきたわけなんだけれども、色々あって今外界と出会ってる。
自分で作った環境の厳しさ故に得しているところもあるけど、作った時点での勘違いがもたらした致命的な欠点もある。で、いまそこで悩むわけです。
まー逆に僕を外来種として認識する人もいるかなとも思ったりします。
で、本のテーマは種同士の話から人間の介入の話へと後半移っていく。
人間が意図的にしろ、そうでないにしろ持ち込んでしまった動物たちはただひたすらに海鳥を捕食・殺戮し、海鳥たちは絶滅の危機に瀕してしまう。自分たちの引き起こした環境の変化がどんな結末をたどろうとしているのかを数世紀越しにようやく気が付いた人たちは、島における外来種の根絶の戦いを始める。
最初は罠などで継続的に数を減らそうとするが、増殖力に優れている種は一向に減っていかない。そしてついには体内に入れると体から血が流れ出てしまい、毒餌を食べてから短期間で死に至る毒が導入される。
しかし遺伝子は人間を笑うかのようにその毒に耐性を持ったネズミを生み出してしまう。短絡的な見方をすれば毒に耐性がなかった個体は子孫を残せない環境が続くので当然の結果なのだけれども。
そしてそれに対応するためにさらに強力な毒と知恵を導入し、ついに人間は大量の動物を子孫が残せないくらいの短期間で根絶させるという手段で勝利するに至り、いくらかの場所では海鳥の減少が止まり、再びその数が増えようとしている。
大量のネズミの死によって支えられる希少種の生存。それが正しいか否かは十分に考える必要がある問題である。本の中でも言及があるけれども、ネズミにも感情はあるし、痛みも感じる。毒殺といえども簡単に死ぬわけではなく、苦しみながら死んでいく事がわかっている。
十分に考える必要がある問題だからといって、ゆっくりしている時間はなく、海鳥は放置すれば数年で絶滅してしまう。
こういった事態に直面した人間がどんなアイデアをベースにして、どんな決断をするのか?が非常に興味深いですね